ランニングのためのストレッチは、日々のトレーニングプログラムになくてはならない要素です。ランニングのためのストレッチは、筋肉の健康と寿命を維持するだけでなく、ケガの予防やランニングパフォーマンスの向上にもつながります。ランニングの前後に適切なウオームアップとクールダウンを行うとともにストレッチも欠かさず行いましょう。
それでは、ランナーのためのストレッチが、なぜ重要なのかを見ていきましょう。
※本記事では海外のアシックスランニングコーチの指導内容をご紹介しており、日本でのアシックスランニングコーチの指導内容と異なる箇所がございます。
[目次]
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ストレッチはなぜ重要なのか?
運動時、筋肉は短くなり硬くなります。凝り固まった筋肉は、時間の経過とともに弱くなり運動に対する抵抗が増します。柔軟性が失われ、その結果、関節に負荷がかかりケガのリスクが高まります。ランニング後のストレッチは、硬くなった筋肉をほぐし、強くてやわらかい健康な筋肉を保ちます。
ランニング前後のストレッチを行うことで、筋肉を温めて伸ばし身体の可動域を広げ、安全かつ快適に運動することが可能になります。また、精神を集中する力が研ぎ澄まされるとも言われており、心と体のつながりを強め、ランニング全体のパフォーマンスを向上させることができるでしょう。だからこそ、ランナーにとってランニング前後のストレッチは非常に大切なのです。
ランニングのためのストレッチ方法において、タイミングは最も重要な要素のひとつです。ランニングのためのストレッチ効果を高いレベルで発揮するために、ストレッチを行う適切なタイミングを見ていきましょう。
いつストレッチをすれば良いのか?
ランニング後のストレッチでは、体が十分にクールダウンされ、心拍数が適度な速度に戻っていることを確認してから始めることが重要です。
ランニング前のストレッチでは、心拍数を上げて血液が筋肉に流れ込むようにします。正しいタイミングで行えば、ストレッチの効果を高いレベルで発揮できるでしょう。
では、ランナーのためのストレッチに適したタイミングをいくつか見てみましょう。
- イージーランの後
筋肉が温まっていて、かつストレスがかかっていない状態であれば、ハムストリングスや大腿四頭筋などの大きな筋肉群を中心にストレッチを行います。静的ストレッチと動的ストレッチのどちらも、筋肉をリラックスさせることができます。 - ヒルランニングの後
丘の下り(ハムストリング)と上り(ふくらはぎと大腿四頭筋)に影響をうける筋肉を重点的にストレッチします。 - 朝と夜
朝一番に簡単なストレッチを軽くすることで、筋肉や腱のこわばりをほぐすことができます。就寝前にリラックスのためのストレッチをゆっくり行うことで、可動域が広がり、睡眠の質の向上も期待できます。 - お風呂やシャワーの後
お風呂やシャワーで筋肉がすでに温まっている場合は、この時間を利用して柔軟性を高めましょう。 - 走る前
筋肉を整え、血流をよくするために、動的ストレッチを試してみましょう。そうすることでランニングパフォーマンスの向上を実感できるでしょう。
ランニング前のストレッチ
舗装された道路でも未舗装路でもランニングする前には、体を温める時間を取ってください。わずか数分の時間を取ることで、筋肉の弾力性を高め、ケガの予防にもなります。ランナーにおすすめのストレッチをいくつかご紹介します。
1.ウォーキングランジ
- 立った姿勢から両手を腰に置き、片足を前に踏み出してランジ姿勢に入り、両ひざを90度に曲げて、ひざから足首まで縦に一直線にします。
- 両足をそろえて立った状態に戻り、もう片方の脚で同じ動作をします。片足につき12~15回行います。
これは腰と大殿筋に効果のあるウオームアップで、体幹の活性化にもつながります。
2.ハムストリングスイープ
- 片方の足を前に少し踏み出し、お辞儀をしながら後ろの脚のひざを曲げ、腕を前に振り上げます。
- 立った状態に戻り、もう片方の脚で前に踏み出し、同じようにして徐々に前に進みます。片足につき12~15回行います。
このストレッチはハムストリングを温め、体幹周辺の筋肉を活性化させるだけでなく、ふくらはぎの筋肉にも効果のあるストレッチです。
3.ヒップサークル
- 立った姿勢から片方のひざを胸まで引き上げ、横に開きます。
- 立った状態に戻り、もう片方のひざにも同じことを繰り返し、片足につき12~15回ずつ行います。
このランニングストレッチは、股関節屈筋と鼠径(そけい)部の筋肉を温め、関節の強化につながります。
4.ハイニー
- 片方ずつひざを胸まで引き上げキープし、両足を交互に動かします。
- このひざ上げの後に前に踏み出すことで、このエクササイズにウォーキングを加えることができます。片足につき12~15回行います。
これは大殿部の筋肉を温めます。
5.ジャンピングジャック
- 両足をそろえて立ち、両腕を脇に下します。
- 両足をジャンプしながら横に広げ、同時に両腕を振り上げ頭の上で拍手するように合わせます。なめらかな動きを心掛けてください。これを1セット15回行い、これを3セット行います。
ジャンピングジャックは、ランニング前のストレッチの最後に行うと、心拍を上げる効果があります。
ランニング後のストレッチ
ランニング後のストレッチは、柔軟性と関節の可動性を強化し、長く引き締まった健康的な筋肉へと導きます。ランニング後は筋肉を伸ばすのに理想的なタイミングです。
6.股関節屈筋のストレッチ
- まずは両手を太ももの上に置いたランジ姿勢(両脚を前後に開く)をとり、上半身は高く上げて少し前に出します。
- 後ろの脚のひざを床におろし、最大30秒間キープします。
- もう片方の脚でも行い、片足につきで2~3回行います。
このストレッチは、股関節周りを開き、屈筋の緊張をほぐします。
7.ダウンドッグのポーズ
- まずは四つん這いになります。
- そこから足をまっすぐに伸ばし、かかとを地面につけるようにしながら、両腕をまっすぐに伸ばして押します。
- 手首と肩を一直線にして、ひじを耳に近づけるようしてください。
- 深呼吸を3回行い、子どものポーズでリラックスします。3~6回行います。
ダウンドッグのポーズは、背中からハムストリングス、ふくらはぎ、足首にいたるまで、すべての筋肉に効果のある、ランニングのためのとても良いストレッチです。
8.ハムストリングのストレッチ
- 背筋を伸ばして立ち、バーや椅子に片方の足を乗せます。
- 前屈し、腕を前に伸ばします。そのままの姿勢で30秒。片足につき2~3回行います。
ハムストリングストレッチは、股関節の柔軟性を高め、可動域を広げる効果があります。
9.ふくらはぎのストレッチ
- 壁に向かって立ち、片足を前に出し、ひざが90度になるようにします。
- 後ろ足をまっすぐに伸ばし、両手を壁に置いて体を支えます。
- 引いた足のかかとが床から浮かないよう平らにすることに集中してください。
- そのままの姿勢で30秒。これを片足につき2~3回行います。
このストレッチは、ふくらはぎの筋肉を伸ばすだけでなく、アキレス腱を伸ばす効果もあります。
10.腸脛(IT)靭帯(ちょうけいじんたい)のストレッチ
- 壁の横にして立ち、片方の脚をもう片方の脚の前で交差させます。
- 壁を支えとして使います。壁と反対側の手を腰の上に置き、もう一方の腕を頭の上に上げ、腰を曲げます。
- そのままの姿勢で30秒。これを片足につき2~3回行います。
このストレッチは太ももの外側に特化したストレッチですが、背骨、上半身、腰まわりのこわばりをほぐす効果もあります。
ランナーのためのストレッチのポイント
ランナーにとって一番のポイントは、毎日ストレッチをすることです。ストレッチを行うことによって体をしなやかに保ち、筋肉や関節の状態を整えます。あなたのランニングに、ストレッチの効果を高いレベルで発揮するためのヒントをいくつかご紹介します。
ランニング前のストレッチのポイント
ランニング前にストレッチを行う目的は、血行を良くして筋肉や関節の動きをなめらかにすることです。筋肉から脳まで、ランニング前にストレッチすることで、精神的にも身体的にも準備が整います。
ストレッチを行う際のヒントや注意点をいくつかご紹介します。
- 温まっていない筋肉は絶対に伸ばさないでください
まずは血流をよくすることが必要です - ストレッチの姿勢を30秒間キープしましょう
高いレベルの効果を得るために適した時間であるため、同じ姿勢の維持は30秒以内に留めてください - 無理をしないようにしましょう
ストレッチは筋肉をほぐすもので、痛みを伴うものではありません。 - ストレッチの間は姿勢を保ちましょう
反動や勢いをつけるとケガをする場合があります。 - 筋肉が硬くなっている場合は、シャワー後にストレッチを行ってください
お湯を使って筋肉を温めることで、走る前に筋肉をほぐすことができます。
ランニング後のストレッチのポイント
運動後、筋肉は短く硬くなります。ストレッチを行うことで、筋肉を伸ばすと同時に柔軟性を高め、関節の可動域を高めます。始める前に知っておくべきポイントをいくつかご紹介します。
- ストレッチを無理に行うことは避けましょう。
自分の体に耳を傾け、気持ちよいと思える程度でのみストレッチを行ってください。過度なストレッチは、良いことより悪いことを引き起こす可能性があります。 - 正しい呼吸をしましょう。
ストレッチの動きと呼吸を合わせることで、体をリラックスさせ、伸ばせる範囲を広げることができます。 - ストレッチする前にクールダウンを行ってください。
立ちくらみを避けるために、ストレッチの前に心臓と血圧を正常に戻す時間を取りましょう。
ストレッチの効果を高いレベルで発揮させ、ランニングパフォーマンスの向上へつなげるには、ストレッチはトレーニングの前後に行います。ストレッチは積み重ねにより効果がでるため、毎日取り組む必要があります。ストレッチをすればするほど、柔軟性が高まり、可動性も向上します。
さらにASICSの豊富に取りそろえたランニングシューズとアイテムで、あなたのランニング体験をより快適なものに仕上げていきましょう。
※運動やストレッチを行う前に、必要に応じて医療機関に相談してください。